末遠き二葉の松・・・行く末の遠い幼い松。 けなす、そしる。 風流がりな男であると思いながら源氏は 直衣 ( のうし )をきれいに着かえて、夜がふけてから出かけた。
これほどには接近して逢おうとは思わなかった娘であるから、よそよそしくしか答えない。
薄雲~この雪すこしとけて渡りたまへり~ 【冒頭部】 この雪すこしとけて渡りたまへり・・・・・・ 【現代語訳】 この雪が少しとけてから(源氏は大井の里に)おいでになった。
よろしき若人・童・・・容姿の悪くない若い女房や召使いの少女。
須磨は寂しく静かで、漁師の家もまばらにしかなかったのである。 言うとすぐに。
手紙はひろがったままであるが、 女王 ( にょおう )が見ようともしないのを見て、 「見ないようにしていて、目のどこかであなたは見ているじゃありませんか」 と笑いながら夫人に言いかけた源氏の顔にはこぼれるような 愛嬌 ( あいきょう )があった。
わが身の上のかいなさをよく知っていて、自分などとは比べられぬ都の 貴女 ( きじょ )たちでさえ捨てられるのでもなく、また冷淡でなくもないような扱いを受けて、源氏のために物思いを多く作るという 噂 ( うわさ )を聞くのであるから、どれだけ愛されているという自信があってその中へ出て行かれよう、姫君の生母の貧弱さを人目にさらすだけで、たまさかの訪問を待つにすぎない京の暮らしを考えるほど不安なことはないと 煩悶 ( はんもん )をしながらも明石は、そうかといって姫君をこの 田舎 ( いなか )に置いて、世間から源氏の子として取り扱われないような不幸な目にあわせることも非常に哀れなことであると思って、出京は断然しないとも源氏へ答えることはできなかった。
「私はやはり源氏の君が犯した罪もないのに、官位を 剥奪 ( はくだつ )されているようなことは、われわれの上に報いてくることだろうと思います。 源氏は悲しくて、 「私もお供してまいります」 と泣き入って、父帝のお顔を見上げようとした時に、人は見えないで、月の顔だけがきらきらとして前にあった。
そしてそれに自身の生活を日記のようにして書いていた。
(昔)兵藤太といっていた人もここにいるであろう。
一部の者は。 晴れ晴れしく思うのにつけても、本当に住吉の神(の霊験)も並々でないと思わずにいられない。
心の中では美しい源氏を始終見ていたくてならないのである。
夫人の手紙は、 浦風やいかに吹くらん思ひやる 袖 ( そで )うち濡らし波間なき 頃 ( ころ ) というような身にしむことが数々書かれてある。
いまめしかう、並びなきことをばさらにも言はず、心にくくよしある御けはひを、はかなきことにつけても、あらまほうしうもてなし聞こえ給へれば、殿上人なども、めづらしきいどみどころにて、とりどりに候ふ人々も、心をかけたる女房の用意・ありさまさへ、いみじくととのへなし給へり。
平生は苦しくばかり思われる秋の長夜もすぐ明けていく気がした。 それはほんの短い時間のことであったが不思議な海上の気であった。
雪深み・・・雪が深いために。
日暮れ前に参内しようとして出かけぎわに、源氏は隠すように紙を持って手紙を書いているのは大井へやるものらしかった。
源氏が贈ったもの。
(3) いとうつくしげに、 雛 ひひな のやうなる御ありさまを、夢の心地して見 奉る にも、 たいそうかわいらしい様子で、ひな人形のような(明石の姫君の)ご様子を、夢のような心地で見申し上げるにつけても、 涙のみとどまらぬは、一つものとぞ見えざりける。 優雅な。 以前は 痩 ( や )せて 背丈 ( せたけ )が高いように見えたが、今はちょうどいいほどになっていた。
今日着て行く 狩衣 ( かりぎぬ )の一所に女の歌が、 都 出 ( い )でし春の 歎 ( なげ )きに劣らめや年ふる浦を別れぬる秋 と涙を 袖 ( そで )で源氏は 拭 ( ぬぐ )っていた。 また、(2)「むべこそは」とほぼ同じ意味の感慨を表す言葉が本文中にある。
あなたは自分は自分であると思い上がっていればいいのですよ」 と源氏は教えていた。
若い女のいる所としてはきわめて寂しい。